墓じまい(改葬)の費用相場・手続き・注意点がよくわかる
墓じまい(改葬)の費用相場・手続き・注意点を徹底解説でトラブル解消
「お墓が遠くて、なかなかお参りに行けない…」
「お墓を継いでくれる子どもに負担をかけたくない…」
「自分の代でお墓を整理したいと考えている…」
近年、このようなお悩みや考えを持つ方が増え、「墓じまい(はかじまい)」という言葉を耳にする機会が多くなりました。墓じまいとは、今あるお墓を撤去・整理し、ご遺骨を別の場所に移して供養すること。これは決してご先祖様をないがしろにする行為ではありません。むしろ、時代の変化に合わせて供養の形を見直し、未来の世代へと負担を残さずに、ご先祖様への感謝の気持ちをつないでいくための、前向きで大切な選択肢なのです。
しかし、いざ墓じまいを考え始めると、
「何から手をつければいいの?」
「費用は一体いくらかかるんだろう?」
「親戚とトラブルにならないか心配…」
など、たくさんの疑問や不安が湧き上がってくることでしょう。
この記事では、そんなあなたの不安を解決します。墓じまいの基本的な知識から、具体的な手続きの流れ、費用の内訳、そして後悔しないための注意点まで、徹底的に解説します。
目次
▶ 第1章:墓じまいとは? なぜ今、注目されているのか?
▶ 第2章:墓じまいの具体的な流れと手順
▶ 第3章:気になる費用はどれくらい? 内訳と相場を徹底解説
▶ 第4章:後悔しないために! 墓じまいの注意点とトラブル回避法
第1章:墓じまいとは? なぜ今、注目されているのか?
まずはじめに、「墓じまい」とは具体的にどういうものなのか、そしてなぜこれほどまでに注目されるようになったのか、その背景まで知って理解を深めていきましょう。
墓じまいの定義
墓じまいとは、法律的には「改葬(かいそう)」と呼ばれる手続きの一部です。具体的には、以下の3つのプロセスを合わせたものを指します。
01:お墓の撤去
現在のお墓(墓石)を解体・撤去し、墓所を更地に戻して管理者に返還する。
02:ご遺骨の移動
お墓の中からご遺骨を取り出す。
03:新しい形での供養
取り出したご遺骨を、永代供養墓や納骨堂、樹木葬といった新しい場所に移し、供養を続ける。
重要なのは、墓じまいが「お墓をなくして終わり」ではないという点です。ご遺骨を然るべき場所に移し、供養を継続することが大前提となります。ご先祖様への敬意を忘れず、より自分たちのライフスタイルに合った形で供養を続けていくための、いわば「お墓のお引越し」なのです。
墓じまいが注目される4つの社会的背景
なぜ今、多くの人が墓じまいを検討するようになったのでしょうか。その背景には、私たちの社会が抱える大きな変化があります。
1. 少子高齢化と核家族化
最も大きな要因は、日本の社会構造の変化です。かつては長男が家を継ぎ、代々のお墓を守っていくのが当たり前でした。しかし、少子化によってお墓を継ぐ子孫がいなかったり、子どもが娘さんだけで嫁いでしまったりするケースが増加。また、核家族化が進み、子どもが親元を離れて遠方で暮らすことも珍しくありません。これにより、お墓を物理的に維持・管理していくことが困難になっているのです。
2. ライフスタイルの変化と人口の都市集中

地方で生まれ育った人が進学や就職を機に都市部へ移住し、そのまま定住するケースが一般的になりました。故郷にあるお墓は遠く、お盆やお彼岸に帰省して墓参りをすることが大きな負担になっている方も少なくありません。「年に一度も行けないお墓を、このまま持ち続けていいのだろうか」という葛藤が、墓じまいを考えるきっかけになります。
3. 供養に対する価値観の多様化
「家」や「血縁」を重視した従来のお墓のあり方から、個人の価値観を尊重する供養の形へと意識が変化しています。
永代供養:お寺や霊園が家族に代わって永続的に供養・管理してくれる。
樹木葬:墓石の代わりに樹木をシンボルとして眠る。
散骨:海や山にご遺骨を還す。
手元供養:ご遺骨の一部を小さな骨壺やアクセサリーに入れて、身近で供養する。
このように、お墓を持たない新しい供養の選択肢が広く知られるようになり、「自分たちらしい供養の形を選びたい」と考える人が増えています。
4. 経済的な負担
お墓を維持するには、年間管理費がかかります。その相場は、公営霊園で年間数千円~1万円程度、民営霊園や寺院墓地では年間1万円~2万円程度が一般的です。この費用が、特に年金生活者にとっては決して小さな負担ではありません。将来、子どもたちにこの負担をかけたくないという思いから、自分の代で墓じまいを決断するケースも増えています。
これらの背景から、墓じまいは「先祖代々のお墓をなくしてしまう、後ろめたい行為」ではなく、「ご先祖様と、今を生きる私たち、そして未来の世代、そのすべてにとって最善の形を考える、愛情深い選択」として捉えられるようになっているのです。
第2章:墓じまいの具体的な流れと手順
墓じまいを決意したら、次は何をすべきでしょうか。ここからは、実際に墓じまいを行うための具体的な流れを、7つのステップに分けて詳しく解説します。手続きには時間と手間がかかりますので、全体の流れを把握しておくことが非常に重要です。
【Step 1】親族との相談・合意形成

墓じまいを進める上で、最も重要かつ、最も丁寧に進めるべきステップです。
お墓は、あなた一人のものではなく、親や兄弟姉妹、叔父叔母、いとこなど、多くの親族にとって大切な場所です。何の相談もなく話を進めてしまうと、「なぜ勝手に決めたんだ!」「ご先祖様に申し訳ない」といった感情的な対立を生み、深刻なトラブルに発展しかねません。
誰に相談すべきか?:お墓に関わりの深い親族全員に声をかけるのが理想です。少なくとも、ご両親、ご兄弟には必ず相談しましょう。
何を伝えるか?:
なぜ墓じまいをしたいのか(理由を正直に、丁寧に説明する)
墓じまいにかかる費用は誰が、どのように負担するのか
ご遺骨の新しい供養先(改葬先)をどう考えているか
合意形成のポイント:一方的に決定事項を伝えるのではなく、「相談」という形で、全員の意見に耳を傾ける姿勢が大切です。すぐに合意できなくても、焦らずに何度も話し合いの場を持ちましょう。この段階でしっかりと合意を得ておくことが、後の手続きをスムーズに進めるための鍵となります。
【Step 2】墓地管理者への連絡と意思表示
親族間の合意が得られたら、次にお墓があるお寺や霊園の管理者に、墓じまいをしたい旨を伝えます。
寺院墓地の場合:ご住職に連絡します。これまでお世話になった感謝の気持ちを伝え、丁寧に事情を説明しましょう。この際に、墓じまいに必要な手続きや書類、そして「離檀料(りだんりょう)」について確認します。離檀料については第3章で詳しく解説します。
公営・民営霊園の場合:霊園の管理事務所に連絡し、墓石の撤去や返還に関する手続きを確認します。
この段階で、後の行政手続きで必要になる「埋葬(収蔵)証明書」の発行を依頼しておくとスムーズです。これは、「ここに遺骨が埋葬されています」という証明書です。
【Step 3】新しい供養先(改葬先)の決定と契約
ご遺骨の「お引越し先」を決めます。Step 1の親族相談の段階で、ある程度候補を絞っておくと良いでしょう。主な選択肢には以下のようなものがあります。
| 供養方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 永代供養墓 | 管理の手間や費用が少ない | 合祀されると後から遺骨を取り出せない |
| 納骨堂 | 天候に左右されずお参りできる、交通の便が良い場所が多い | 永代使用料や管理費が必要 |
| 樹木葬 | 自然に還るイメージ、宗教色が薄いことが多い | 時が経つと場所が分かりにくくなることも |
| 新しい一般墓 | これまで通り個別にお参りできる | 費用が高額、再び承継者の問題が出る |
| 散骨 | 費用が比較的安い、維持費がかからない | 手を合わせる対象がない、親族の理解が必要 |
| 手元供養 | 故人を身近に感じられる | 全ての遺骨を保管するのは難しい |
それぞれの特徴や費用を比較検討し、家族全員が納得できる場所を選びましょう。改葬先が決まったら契約し、「受入証明書(永代使用許可証など)」を発行してもらいます。これも行政手続きで必須の書類です。
【Step 4】行政手続き(改葬許可申請)
いよいよ行政手続きです。現在お墓がある市区町村の役所で「改葬許可」を得る必要があります。この許可なく、勝手に遺骨を動かすことは法律で禁じられています。
申請に必要な主な書類は以下の3点です。
改葬許可申請書:役所の窓口でもらうか、ウェブサイトからダウンロードします。ご遺骨一体につき一枚必要な場合が多いです。
埋葬(収蔵)証明書:現在の墓地管理者(Step 2で依頼)から発行してもらいます。
受入証明書:新しい供養先の管理者(Step 3で依頼)から発行してもらいます。
これらの書類を揃えて役所に提出し、不備がなければ「改葬許可証」が交付されます。
【Step 5】閉眼供養(魂抜き)とご遺骨の取り出し

お墓からご遺骨を取り出す前に、大切な儀式を行います。それが「閉眼供養(へいがんくよう)」です。宗派によっては「魂抜き」「お性根抜き」とも呼ばれます。
これは、墓石に宿っているとされる故人の魂を抜き、お墓を「ただの石」に戻すための儀式です。通常、お寺のご住職にお願いして、お墓の前でお経をあげてもらいます。親族にも立ち会ってもらい、これまでお墓を守ってくれたご先祖様に最後の感謝を伝える大切な機会としましょう。
閉眼供養が終わったら、石材店に依頼して墓石を動かし、ご遺骨を取り出します。
【Step 6】墓石の解体・撤去と更地化
ご遺骨を取り出した後、石材店が墓石の解体・撤去作業を行います。墓地は使用者の所有物ではなく、あくまで借りている土地です。そのため、墓石をすべて撤去し、区画を更地に戻して管理者に返還する義務があります。
石材店は、現在のお墓を建てた業者に依頼するのが一般的ですが、複数の業者から見積もり(相見積もり)を取ることを強くお勧めします。費用や作業内容を比較検討し、納得のいく業者を選びましょう。
【Step 7】新しい供養先への納骨
すべての手続きが完了したら、最後にご遺骨を新しい供養先に納めます。この際、「改葬許可証」を新しい供養先の管理者に提出する必要があります。忘れないように必ず持参しましょう。
新しいお墓や納骨堂に移す場合は、「開眼供養(かいげんくよう)」や「納骨式」といった法要を行うのが一般的です。これにて、一連の墓じまいの流れは完了となります。
第3章:気になる費用はどれくらい? 内訳と相場を徹底解説
墓じまいを考える上で、最も気になるのが費用面ではないでしょうか。墓じまいの費用は、総額で30万円~300万円程度と非常に幅があります。なぜなら、お墓の状況や新しい供養先の選択によって、金額が大きく変動するからです。
ここでは、費用の内訳とそれぞれの相場を詳しく見ていきましょう。
墓じまいの費用の主な内訳
墓じまいの費用は、大きく分けて以下の3つに分類できます。
今あるお墓の整理にかかる費用
行政手続きなどにかかる費用
新しい供養先にかかる費用(改葬費用)
【1】今あるお墓の整理にかかる費用
| 項目 | 費用の相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 墓石の解体・撤去費用 | 20万円~50万円 | 墓地の面積1㎡あたり10万円前後が目安。重機が入れない場所などは高額になる傾向。 |
| 閉眼供養のお布施 | 3万円~10万円 | 僧侶への感謝の気持ち。交通費として「お車代」を別途包むことも。 |
| 離檀料 | 3万円~20万円 | 寺院墓地の場合のみ。これまでお世話になった感謝のしるし。高額請求には注意が必要。 |
■墓石の解体・撤去費用
これは墓じまい費用の中でも大きな割合を占めます。墓地の面積、墓石の大きさ、そして作業のしやすさ(重機の搬入が可能か、山の上などではないか)によって費用が変動します。必ず複数の石材店から見積もりを取りましょう。
■離檀料(りだんりょう)
寺院墓地にお墓がある場合、墓じまいをすることはそのお寺の「檀家(だんか)」をやめることを意味します。その際に、これまでお墓を管理・供養してくれたことへの感謝の気持ちとしてお渡しするのが離檀料です。法的な支払い義務はありませんが、慣習として定着しています。相場は、通常の法要でお渡しするお布施の2~3倍程度と言われますが、お寺との関係性によっても変わります。
【2】行政手続きなどにかかる費用
各種書類の発行手数料
改葬許可申請書や埋葬証明書などの発行手数料です。
行政手続き自体にかかる費用は数百円~千円程度で、それほど高額ではありません。
【3】新しい供養先にかかる費用(改葬費用)
| 供養方法 | 費用の相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 新しい一般墓を建てる | 150万円~300万円 | 墓石代+永代使用料が新たに必要です。 |
| 永代供養墓 | 10万円~100万円 | 合祀(他の方と一緒)か個別かで変動。 |
| 納骨堂 | 30万円~150万円 | シンプルなロッカー型、豪華な仏壇型など様々。 |
| 樹木葬 | 20万円~80万円 | 合祀型、個別型、庭園型などがある。 |
| 散骨 | 5万円~50万円 | 業者に委託するか、船をチャーターするかで変動。 |
| 手元供養 | 1万円~30万円 | ミニ骨壺やアクセサリーなど、選ぶ品物による。 |
■費用を抑えるポイント
自治体の補助金を確認する:墓じまい(改葬)に関する国の補助金制度は基本的にありませんが、一部の自治体(市区町村)では独自の助成金や還付金制度を設けている場合があります。念のため現在お墓がある自治体に確認してみる価値はあります。
第4章:後悔しないために! 墓じまいの注意点とトラブル回避法
墓じまいは、多くの人にとって一生に一度の経験です。だからこそ、後悔のないように、起こりうるトラブルを事前に知り、対策を立てておくことが重要です。
1. 親族とのトラブルを避ける
「第2章:Step 1」でも強調しましたが、最も避けたいのが親族間のトラブルです。
情報交換の徹底:進捗状況をこまめに共有し、「勝手に進められた」という不信感を与えないようにしましょう。
費用負担の明確化:誰がいくら負担するのか、話し合いの段階で明確に決めておきましょう。口約束ではなく、簡単な覚書を交わしておくとより安心です。
感情的にならない:お墓に対する思いは人それぞれです。反対意見が出ても、まずは相手の気持ちを受け止め、冷静に話し合うことを心がけましょう。
2. 寺院とのトラブル(高額な離檀料)
ほとんどの寺院は良識的な対応をしてくれますが、残念ながらごく稀に、法外な金額の離檀料を請求されるケースも報告されています。
感謝の姿勢を忘れない:トラブルを避ける基本は、これまでお世話になったことへの感謝を丁寧に伝えることです。高圧的な態度や一方的な要求は禁物です。
高額請求への対処法:もし相場を大きく超える金額を請求された場合は、まずその内訳や根拠を冷静に尋ねてみましょう。それでも納得できない場合は、一人で抱え込まず、地域の仏教会や弁護士、行政書士などの専門家に相談することを検討してください。
3. 石材店とのトラブル
墓石の解体・撤去を依頼する石材店とも、トラブルが起こる可能性があります。
契約内容の確認:見積書や契約書は隅々まで確認しましょう。「墓石の撤去」「基礎部分の解体」「整地」「廃材の処分費用」など、どこまでの作業が含まれているのかを明確にします。
追加料金の有無:「作業当日に予期せぬ事態が起きた」として、高額な追加料金を請求されるケースがあります。契約前に、追加料金が発生する可能性があるかどうか、その場合はどのようなケースでいくらぐらいかかるのかを確認しておくと安心です。
4. 「無縁仏」にしてしまうリスク
最後に、墓じまいをせずに放置してしまった場合のリスクにも触れておきます。
お墓の管理費を滞納し続け、承継者とも連絡が取れない状態が続くと、最終的にそのお墓は「無縁墓(むえんぼ)」として、墓地の管理者によって撤去されてしまいます。中のご遺骨は、他の無縁仏と一緒に合祀されてしまい、二度と取り出すことはできません。
ご先祖様を無縁仏にしてしまうことほど、悲しいことはありません。そうなる前に、管理が難しいと感じた時点で、責任を持って墓じまいを計画することが、ご先祖様への最後の務めとも言えるでしょう。
まとめ:墓じまいは、未来へつなぐ新しい供養のはじまり
墓じまいは、単なるお墓の「お片付け」ではありません。それは、変化する社会の中で、ご先祖様への感謝の気持ちをどう表現し、未来へとつないでいくかを真剣に考える、尊い営みです。手続きは複雑で、費用もかかり、親族との話し合いなど精神的な負担も大きいかもしれません。しかし、このプロセスを一つひとつ丁寧に乗り越えることで、あなたとご家族は、肩の荷を下ろし、新しい形でご先祖様とのつながりを感じられるようになるはずです。
墓じまいは、決して終わりではなく、新しい供養の始まりです。一人で抱え込まず、ご家族や専門家とよく相談しながら最善の道を見つけてください。













