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加齢とともに “こじれる” ヒト×モノ

 フィンランド映画観たことありますか?
フィンランドと聞いて真っ先に思い浮かべるのは「ムーミン」と「サンタクロース」では? お国は違えど「モノを多く抱え込む」ことが影響する人びとの悩みに大差はない…ということが「365日のシンプルライフ」という映画で実感できます。ヘルシンキの20代の若者が、モノを部屋から全部なくし、そして1年間に渡り4つのルールに従って「自分の幸せは?人生の大切なものは?」の答えを探し出すドキュメンタリー映画です。「家の中にモノが多い」、「探し物ばっかりしている」と感じた方にこの映画オススメです。観ると考えが変化するかもしれません。

 第二次世界大戦後、モノのない時代を経て…モノが持てるようになると、人はなんでも家の中にとどめて「手放す」ことをしなくなりました。日本特有の「捨てるなんてもったいない」という考えや教えから、ますます捨てることに抵抗があるのです。その結果的「ヒト×モノ」関係がこじれて、心にまで影を落とす人が多いのです。「断捨離」や「整理収納」「生前整理」などの言葉がマスコミに取り上げられていることで「いかに問題か?」納得がいくでしょう。ここでは、時間の経過(加齢)ともに「ヒト×モノ」が複雑化しがちなアイテムをピックアップします。ご自身の所有と比較して「考える」きっかけにしてみましょう。

 このコラムは、40代、50代…の方にも読んで実家の片づけの「項目」のひとつにしていただきたい。老親の生活の“質”が向上しますので目を通しておきましょう。

多過ぎる来客用の寝具

加齢とともに “こじれる” ヒト×モノ

 「誰か泊まりに来た時に“ふとん”がないと困るから」という高齢者の方がたの言葉を耳にします。私の母も例外ではありません。実家の押入れ2間の、中段は来客用のふとんが収納されています。冬季に6名が泊まりに来ても安心してお迎えできる寝具の量です。「泊まりに来たら」大活躍ですが、年に1回あるかないか?の来客にほぼ2間分のスペースが、約360日稼働しないまま…押入れを占有しています。日本は湿気が多い気候ですから押入れの対策は欠かせません。それに一切使わない月があっても年に数回は外干しが必要でしょう。(素材によって異なりますが、木綿ならば週2回、合繊ならば週1回外に干す、とある資料には記載されています)またカビなどが生えないようにクリーニング、綿ふとんを打ち直す、経年劣化した羽毛をリフォームしたり…しまっているだけではなく、清潔を保つためには「手入れ」が欠必要です。加えて、昔ながらの綿わた敷きふとんの重さと全体的な物量も、加齢とともにさらに負担となっていくようです。
 さまざまな理由から「ふとん」は高齢者の生活に重荷になります。そして手放す際には「費用」が掛かり、運び出すという「作業」も発生します。

着物

着物については、「終活…整理編_着物は着るために」で紹介していますので詳しくはそちらをご覧ください。

アルバムや写真類

加齢とともに “こじれる” ヒト×モノ

 押入れの奥の方に、さまざまな形態のアルバム類や、独立した子供がそのまま残していった卒業アルバムなどが「かたまり」のようにぎゅっと押し込まれてはいませんか?「老後の楽しみに写真整理をする」と思ってそのままにしている方も多くいます。しかし「人生100年時代」が到来し、60代はもちろん70代も忙しく、人生を楽しんでいるため「写真整理」はほとんど手つかずのまま時間は経過します。では「写真整理」を後回しにするとどうなるのか? 紙焼き写真のまま束に置いておくと色が薄くなったり変化していきます。アルバムに入った写真も、アルバム本体の表紙がはがれたり、変色したり、貼り付けているセロファン紙が破れたりと劣化していきます。ほとんどの「回収業者」は、「写真整理」まではしてくれませんので、自身、配偶者、子どもなどが最低限やらなければなりません。「写真整理」には「気力」「記憶」「おっくうに感じないメンタル」が必要です。そのためになるべく早めに計画的に取り組むことです。写真の枚数や、データの量にもよりますが簡単には「写真整理は完成」しません。「どんな風に写真のバトンを受け渡すか」など目標を決めて、家族内で協力してできるだけ楽しみながら「写真整理」に取り組みましょう。

独立した子どものモノ

 結婚して、就職して…などさまざまな理由で実家から独立した子どもが、「そのままにしていったモノ」は、多くのご家庭のあるあるでは?学生時代の制服やコート、部活動で使っていたモノ、デスクやベッドなどありとあらゆるアイテムが、持ち主が不在のままそこに数年間放置されてしまいます。私の実家でも…実弟が幼少期に楽しんでいた「Nゲージ」が大量に出てきました(ネットオークションではそこそこ高値で取引されていました)このようにその家に住む“親”では、判断ができない「独立した子どものモノ」は、当人が帰省した際に「片づける」しかありません。帰省する時間はとても貴重ですが“親”の生活の質の向上につながりますのでぜひ「時間をつくって」取り組んでください。それは終活的な見地からご自分のためになります。

「モノは暮らしを豊かにしてくれる」、「モノは許容範囲を超えると、心に重くのしかかる」

 モノは「増える・増やす」のは簡単。反面「減る・減らす」のは困難だという特性があります。毎日暮らしていく中でモノが増えても、減らせないために「家の中のモノは、静かに音も立てずに自身の“許容範囲”を超えてきます。そして加齢とともに自分の“許容範囲”が少しずつ小さくなります。ですからこの「こじらせ」に早めに気がつくこと、そして少しずつ対応していくことがいかに大切か、ご理解いただけるのではないでしょうか? フィンランドの映画は、重要なメッセージを伝えています。20代の若者のリアルな気持ちの変化や答えを導き出す過程もおもしろい…秋の夜長に1本いかがですか?動画配信サイトで見ることができます。
© 2020 澤渡裕子